2021
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アクリル絵具・木炭粉・顔料、キャンバス・木製パネル/2,400mm×3,970mm×30mm
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撮影: 増田好郎
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インドの遺跡(クトゥブ・ミナール)をモチーフにして、青森県や大阪府で約30名の人々との協働制作による絵画作品。
絵画の色とりどりの下地は、青森県で収集した錦石がモチーフとなっており、協働制作に参加した方々は、それらの石を見ながらアクリル絵の具やメディウムを用いて、色彩や質感、紋様を作家と同じ道具で描いた。
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VOCA 展2022 推薦文 大槻晃実氏(芦屋市立美術博物館学芸員)
野原は、2020 年に訪れた青森の海岸で、美しい石を見つけた。その石が、インドで見た遺跡の石積みと共通する多彩な表情を持つことに心惹かれ、それらの石をモチーフに、青森の人々と協働制作をおこなった。参加者に採取し
た石を渡し、石の内側に拡がる色の数々を想像し描いてもらう。野原は彼らの絵から描き手の思考を読み解き、描き溜めていたイメージを絵の上に重ねていく。他者が描いた時間や感覚を野原は引き継ぎ、思考の標本のような作品
を生み出した。2021 年大阪、時と場所を変え、これらの作品を支持体に同手法による制作をおこなった。バトンとして渡された時間と感覚が積層する、構造物を想起させる絵画が生まれた。環境の中で風化する遺跡の積層構造物
のように、塗り替えられ生き続けていく絵画を目指し野原は制作を続けている。人々の時間、感覚、思考が交差した重層的な絵画である本作は、現代社会における関係性、共同社会の在り方、世界の構造に目を向けさせてくれる。